山田花子没後21年◆誰か花子を想はざる ‐3‐
▼山田花子のノート (2)▼ 彼女はノートに「思い出スケッチ」という章を設けて、その体験をありのままに述べている。 早速、その「思い出スケッチ」を見てみよう。 中1の時、ツッパリ女二人が家の中まで入って来て勝手に私の机を物色したり、落書きしたりしてた。「やめてよオ!」怒っても全然ききめなし。私が黙っているので、つけあがって勝手なことをやりまくってった。花子にとっては、ツッパリ・グループの行動よりも、自分がいじめの対象になっているのに、それを他の級友が黙って見ていることが気になった。 自分はクラスから浮いている存在であり、みんなからおいてけぼりになっているのではないかという不安に襲われたのだ。 中1の時、級友の中でおいてけぼりの私は、やたらとおどけていた(一人は寂しい。存在認めてくれ、面白いと思ってくれ)。周り何となくしらけてる。級友「由美って、ワンパターンなんだもん」みんなを面白がらせようと精一杯努力しているのに、級友は誰も振り向いてくれない。 あいつ、またワンパターンのお芝居をやっていると冷たく黙殺するだけなのだ。 少し長くなるが、ここで再び彼女の手記を引用したい、花子漫画の大半は中学・高校時代の人間関係を題材にしているからだ。 彼女は、「世間」という言葉に「クラスメイト」とルビをふっているのである。 私は他人に自分を認めさせようとする(勝とうとする)気持が強いので、返って他人に受入れられず、人間関係がギクシャクしてしまうと思われる。プライドの高い花子は、級友に嫉妬する自分を惨めだと思う。 そこまで誇りを失っている自分を許すことができなかった。年譜には、次の文字が見える。 「12歳で多摩市立和田中学校に入学、いじめに遭い、リストカットを繰り返す」高校に入っても、彼女がいじめに遭うことに変わりはなかった。 だが、この頃のいじめはありきたりのものではなく、山田花子に対する級友の嫉妬に基づくいじめだったと思われる。 彼女は中3のときに早くもマンガ家として商業誌デビューを果たし、高1になると「なかよしデラックス」に1年間、連載漫画を掲載している。 花子は、クラスの中にあって、唯一輝ける存在だったのである。 それに、花子はミーハーレベルの段階にある級友を内心で軽蔑している傾向があった。 高1の時、クラスのバカグループが、休み時間にポッキー食ってた。一人が、「高市さんも食べる~」私「いらない」(おめーらみたいな下品で、はしたない連中の仲間入りしたくねーよ)。口の中に無理矢理ポッキーを押し込まれるような「リンチ」にあっているうちに、花子は次第に登校拒否を始める。 学校で一人ばっちでいるのは辛い。不安、惨め、自信なくしてしまう。守り合える仲間がいない。誰からも存在を認めて貰えない。無防備なのでいじめられ易い。グループに入ると私だけ取り残される(周りと噛み合わない。感覚が合わない)。結局、山田花子は高1を修了したところで高校を中退し、4月からNHK学園2年に編入、通信教育を受けながら学業を続けることになる。 その傍ら、彼女は喫茶店でアルバイトを始めるが、ここでも人間関係がうまく行かない。 99%の他人は私を無意識の内に苦しめる。まるで私をいじめるために存在しているみたい。みんな嫌いなのに、面と向かうと「いい人」と思っちゃう。人間関係一般に悩み始めた彼女は、周囲の仲間を観察して様々なタイプに分類し、自らを「絶滅寸前種族」と規定するようになる。 私のようなCグループ(注:プライド高いグループ)でも最下位の絶滅寸前種族は、限られた範囲以外の生命体と付合うのは危険。なのに「誰とでも仲良くしなきゃいけない」という世間の「常識」のプレッシャーで、危険区域の奴とも付合ってボロボロになってしまう。■‐4‐へ続く■ |
新「年寄りの冷や水日記」|山田花子の自殺‐3‐より Text By 老子的アナーキスト |